本研究は、入所している、或は入院している認知症高齢者に対してアニマル・セラピー(AAT)を実施し、高齢者の身体的・精神的側面の継続的観察・評価から、動物-高齢者間における長期的かつ具体的な影響を明らかにすることを目的とした。精神機能評価尺度、老年者用精神状態尺度、およびセラピー参加時の縦断的観察を用いて、対象者の観察、機能評価を実施した。AATは2週に1度を目安とし、6回を1クールとし、合計2クール実施した。その結果として、以下のことが、明らかになった。 1.精神機能評価尺度による認知症高齢者の変化:日本語版GBS、MENFISを使用し、犬との交流前、AAT6回終了後、12回終了後に評価した。GBSの運動機能の合計得点、摂食行動は機能の衰退、注意力散漫では機能の改善に有意な差が認められた。 2.ビデオを用いたAAT参加中の認知症高齢者の状況:対象者一人の6回にわたるAAT参加時の行動の分析を実施した。控えめな反応であるA氏の、動物への自然な応答、他者との代弁的コミュニケーション、犬へのポジティブな同一視が見受けられた。 3.施設職員の反応:AATを担当した施設職員へのアンケートを実施したところ、犬との交流を難しいと感じる職員は多かったが、犬との交流継続に関してポジティブな意見を持っている職員は2クール終了後多かった。
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