研究課題
【目的】H20年度は、看護師が体験する共感の特徴を分析するための測定用具「看護師の臨床的共感尺度(仮)」のパイロットスタディを行い、その尺度の妥当性と信頼性を確認することを目的とした。【結果】1.H19年度に作成した測定用具の内容的妥当性を高めるために、看護学大学院生と専門職者20名で項目内容の数値評価を行い、項目内容と構成要因の一致率が80%以上となるように修正し、39項目の尺度とした。2.39項目尺度の基準関連妥当性を検討するため、感情知能尺度(以下EQS)(内山,2004)を外部基準として採用し、2ヶ所の総合病院所属の看護師221名(有効回答率88.0%)を対象に調査をおこなった。(1)対象の特徴:平均年齢39.9歳、看護師経験年数13.6年、96.8%が女性であった。(2)妥当性の検討:構成概念妥当性は、因子分析(主成分分析および最尤法プロマックス法)を行い、19項目尺度となり4因子が抽出された。この因子は臨床場面で発生する看護師の共感性コミュニケーションを構成する要素「静観的認識」「鏡像の感覚」「洞察内容の確認」「心象に応じた行動」と考えられ、因子的妥当性を得た。基準関連妥当性として、4つの因子とEQSの共感性に関する項目群の相関係数は0.59〜0.74と中程度以上の相関が確認され、特に1因子「静観的認識」との間で関係が強く、併存的妥当性が見られた。EQSの共感性以外の項目群との間の相関関係は0.36〜0.67と中程度以下であり、弁別的妥当性が得られた。(3)信頼性の検討:19項目尺度全体としてクロンバックα係数は0.92と高い値であった。4つの下位尺度は0.83〜0.85で信頼性が確認された。【考察】19項目尺度の信頼性、妥当性が確認された。次年度は、この尺度を用いて看護師が共感性コミュニケーションを効果的に用いるにあたり、どのような問題が生じているのかを属性や影響要因との関係から具体的に推測し、うつ病(状態)の患者とのコミュニケーション技法としての望ましいモデルを提示する予定である。