本研究の目的は、統合失調症患者に対する心理教育の成果指標として、統合失調症患者の服薬アドヒアランスに関する認識を測定するための尺度を開発し、信頼性と妥当性を検討することであった。対象者は、関西、北陸、九州の精神医療施設5施設の外来に通院する統合失調症患者とした。対象者の特性は、107名(男性70名、女性37名)、平均年齢36.71歳(SD±13.66)、平均発症年齢30.14歳(SD±10.61)、平均入院回数2.00回(SD±5-48)、クロールプロマジン換算値平均320.24(SD±322.06)であった。データ収集には、服薬アドピアランス質問紙(94項目)と既存の自記式(Beliefs about Medicines Questionnaire(BMQ)、薬に対する構えの調査票(DAI-10)、疾病薬物知識度調査(KIDI))および他記式質問紙(機能の全体的評定(GAF))を使用し、test-retestを実施した。分析方法には、I-T相関分析、探索的因子分析(主因子法・プロマックス回転)、また併存的妥当性を検討するために、各因子と他尺度との相関係数を算出した。信頼性を検討するために、Cronbach'sα係数の算出のほか、再検査法を用いて相関係数を算出した。結果、第1因子<薬の効果>7項目、第2因子<副作用の懸念>3項目、第3因子<薬との親和>3項目からなる統合失調症患者服薬アドヒアランス尺度(累積寄与率は56.08%、cronbach'sα係数.69)を作成した。各因子とBMQ・DAI-10の下位尺度との間に有意な相関が認められた(p<.05)。本尺度は、統合失調症患者の服薬アドヒアランスに関する重要な内容をある程度網羅し、安定性、内的整合性、構成概念妥当性についてもある程度支持されたといえる。
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