研究課題
基盤研究(C)
本研究は、在宅要支援・要介護高齢者(以下、要援護高齢者)の耳のケアニーズを明らかにすることを目的とし、この分析により要援護高齢者の耳のケアの意義を検討する。まず、通所サービスを利用する要支援〜要介護2の高齢者128名に調査を行った。平均年齢は80.0歳、男性3割女性7割、両側上肢機能障害が2割、湿型耳垢が4割であった。耳垢蓄積は、四段階[完全閉鎖・1/2閉鎖・1/3閉鎖・閉鎖なし]に分類し、両側閉鎖なしが34名26.6%、両側1/2閉鎖もしくは完全閉鎖が18名14.1%であった。ケア者は、7割が本人であり、「気持ち悪い・かゆい時」、「風呂あがり」等に行っていた。道具は、耳かき、綿棒、指、ヘアピン、マッチ棒等であり、頻度は、月数回・年数回が2割以上であった。ケアへの不満は、「指が不自由」「(外耳道)奥までとれない」等、約2割にみられた。耳垢蓄積の要因は、上肢機能障害(対抗つまみ)、男性、湿型耳垢、高い介護度が推測された。気導聴力[四分法]は、右側41.3dB左側42.0dBであった。右側気導骨導差は、完全閉鎖の耳が閉鎖なしの耳より低い傾向にあり、耳垢蓄積による聴力低下が示唆された。次に、訪問看護を利用する要介護3〜5の高齢者11名に調査を行った。平均年齢76.0歳、湿型耳垢が5割であり、耳垢蓄積は、両側閉鎖なしが3名、片側の完全閉鎖が2名であった。耳のケアは、約4割が本人・介護者によって月数回の頻度で行われており、介護者の道具は、耳かき、綿棒、ピンセット等であった。困っている事は、「動く」「(左側臥位のため)左側が取れない」等であり、「痛がるので入口だけ」「ヘアピンの湾曲を利用」等を工夫していた。完全閉鎖の者は、非経口的な栄養摂取、セルフケア低下、介護者のケアが共通していた。以上の調査より、在宅要援護高齢者の耳のケアニーズとして、介護度の低い者は、高齢者自身へ道具等の安全なケア方法を普及する必要があり、介護度の高い者は、介護者および在宅ケアのスタッフヘケアの意義・方法の普及が必要であると考えた。
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