研究概要 |
へき地保健医療対策の推移を振り返り、その中でどのように看護職が位置付けられてきたかを検討した。その成果を踏まえ、ルーラルナーシング理論を援用した研究枠組みにより、どのような看護実践活動が継続可能で質の高いサービス提供が可能な活動として機能するかを決定する環境要因と個人要因の同定を行なうことを、本年度の研究目的とした。 環境要因は離島類型,診療所の特性等とし,個人要因は看護師の属性,看護経験の内容と年数,就業理由,さらにはルーラルナーシング理論から5つの概念、つまり、孤立の影響を捉える休暇実態,役割一致感,匿名性欠如感,「身内/よそ者」と「古株/新入り」,専門職自律性(専門職性スケール)を抽出し、個人要因とした。 研究対象地域は,離島におけるへき地診療所に属する看護職者を対象とし、自記式調査票を用い郵送法により実施した。研究に先立ち、倫理審査委員会の承認を受けた。 調査の結果、地域特性や文化に基づいた離島における看護実践モデルを構築するために、看護師の現状から探索し、看護師の活動は地域特性としての離島類型等の環境要因に規定されるだけでなく、看護師本人の考え方や地域住民との関係性といった個人要因にも規定されることが明らかになった。特に、専門職自律性は、看護活動が多様であること、創造的保健活動や勤務外援助活動に結びつくこと、身内とみなされることで、地域参加が促進され、創造的保健活動がしやすく、勤務外援助活動を求められやすくなっていたこと、が明らかになった。看護実践モデルを構築する時、環境要因にだけ注目することなく、個人要因、「身内/よそ者」、専門職自律性等に着目したモデルの開発が望まれる。尚、需要側調査のための予備調査については、本年度は鹿児島県離島のみ実施した。
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