本年は収集した調査データを解析し、国内外の学会発表を行った。学会誌への投稿を行っているが掲載は未定である。 小離島の介護基盤体制を支持する原動力と考えられる地域の高齢者を支える力を世代間ネットワークと定義づけた。4島における高齢者をめぐる世代間ネットワーク調査から、将来介護が必要になった時の暮らし意向で島別性別で有意差があったのは、施設のある粟国と伊平屋で島内暮らしの4項目すべてで老年が高く、施設のない座間味でも島内施設の希望が老年で52.2%を占め、同様にどこでも夫婦で暮らしたいが88.2%と高かった。介護施設があることは要介護期における暮らしの選択を老年に保証していた。また高齢期を快適に過ごすために重要なものとして、老年は子や孫、友人や近隣との結びつきが有意に高かった。現に高齢期を生きる老年の意向を踏まえ、世代間ネットワーク強化のための地域づくりや島に合った施設の設置が課題といえる。 火葬場のない粟国村における21年間の死亡個票を解析し、住み慣れた島での終末期や看取りについて検討した。島内死は82件(28.9%)で埋葬され、島外死は203件で火葬されていた。また島内では自宅死が81%に対し、島外では病院死が96%だった。離島高齢者の入院は治療と看取りを目的にしており、住み慣れた島での終末期を可能にするには、入院設備や在宅サービスなど医療福祉基盤の整備充実が必要といえる。 さらに、葬法に対する関心や洗骨経験の有無等について粟国村住民に調査した結果、埋葬容認派が26%で、火葬推進派が73.1%、洗骨経験は全体の71.6%に有った。現在葬儀を担う50-69歳において、洗骨経験が有る者ではその93.8%が火葬場建設を希望しており、島で高齢者が死を迎えられる環境を創ることに前向きであった。火葬場は高齢者の終末期や看取の場所に関連しており、建設に対する各世代の意向を知ることは高齢者をめぐる世代間ネットワークの強さを推測できる一つの方法であると示唆された。
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