今年度は、医療系大学生(青年期)に対して高齢者虐待に関するアンケート調査と介護者の会へのインタビューを行った。アンケート項目は基本属性、虐待に関する知識と田中・福田ら作成の意識調査票、虐待の発生要因と防止策などである。「高齢者虐待という言葉を聞いたことがあるか」の問に対し1・2年次より3・4年次の方が「聞いたことがある」と回答している割合が高かったが、児童虐待という用語に対し高齢者虐待という用語への認識は全体的に低かった。また高齢者虐待防止法について約半数の学生は知らなかった。意識調査では、虐待分類における『放任』『プライバシーの権利の侵害』『社会的孤立や自由の束縛』は『身体的・心理的・性的虐待』に比べ「虐待とは思わない」「分からない」と回答する割合が高かった。高齢者虐待の発生要因、防止策では「高齢者に対する理解を深める」との回答が多く、介護者側の問題点、改善点に視点を当てて回答していた。自由記載の欄には虐待の要因として「介護者側のストレス」と回答しているのが高年次に多く見られた。「介護者のストレス」は職員数の不足、マンパワー不足と強く関連しており、専門科目の受講や実習を終えた高年次は実際の体験を通してそのような回答をしたと考えられた。一方、介護者の会に対して「高齢者虐待をどのように考えるか」について質問を行った。身内の介護経験を通して「虐待はいけないことと分かっていても介護のストレスから虐待を冒してしまうことは当然有りうることだと思う」「特に認知症を患っていると介護のストレスは思いの外強いものがあると実感する」などの声が聞かれた。虐待に対する支援としては「介護者の健康について行政からの支援」「認知症についての学習会の必要性」「介護者同士がお互いの介護について語らえる場としての家族会を行政中心に多く作ってほしい」「高齢者虐待防止法についての啓発が必要」などの意見があった。
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