研究概要 |
本研究では、老年期の心理社会的発達課題である自我統合性の獲得の達成段階を、とくに前期高齢者を対象に明らかにする。更に、自我統合性獲得に関連する要因を現在の生き方、成人期から現在に至る発達課題達成状況の視点から明らかにする。 調査協力者は某同窓会名簿の卒業年度から現在50歳から74歳までの男女を各2000人ずつ無作為に抽出した。4000人を対象に2006年10月13日調査票を配布し回答を求めた。約1ヶ月後に調査票の回答依頼葉書を郵送した。最終回答数は1512人であった。調査未回収の理由は宛先不明者142人、死亡12人、生活多忙3人、海外生活2人、病気療養中2人、両親介護1人、質問内容が難しく尺度が細かく分からない2人、その他2人であった。調査内容は従属変数として統合感を測定するエリクソンの心理社会的段階目録検査(以下、EPSI)を、独立変数として性別、年齢、家族構成、有償労働の有無、主観的健康感、継続居住年数、生き方、発達課題を設定した。生き方、発達課題は自作で質問紙を作成した。EPSI尺度、生き方、発達課題質問項目は得点化する。EPSI尺度、発達課題は得点の高いほど達成感覚が高く、得点の高い生き方ほど、その生き方に近いとした。 結果、有効回答は無効回答7を除く1505人(男689、女816)で回収率37.6%であった。平均年齢は男性64.6歳±6,6歳範囲50〜76歳、女性63.0歳±6.7歳、範囲50〜75歳であった。主観的健康感は8割が健康だと思うと回答し、一人暮らしは1割弱で殆ど家族と暮らしている。有償労働の有無は50〜64歳群に有りが有意に多く、経済的満足の有無は両群間での差は認められなかった。分析対象を前期高齢者65〜74歳533名(男性283人平均年齢69.2歳±2.9歳、女性250人、平均年齢69.2歳±2.7歳)に絞り実施した。年齢を65〜69歳群と70〜74歳群に分け、EPSI総得点について年齢と性による2要因の分散分析を行った結果、年齢にのみ有意な差が認められ、70〜74歳群に比し65〜69歳群の得点が高かった。65〜69歳群でEPSI総得点と相関係数が.5以上の項目は発達課題では「エネルギーの再方向づけ」、「死の受容」で、70〜74歳群では上記課題の他に「家庭運営」、「職業管理」で有意な相関が認められた。 生き方では、両群共に「努力型」、「行動型」であった。今後詳細な分析を実施する。
|