研究目的:医療施設における認知症看護に特有な看護実践能力を修得するまでのプロセスと構造を記述する。研究方法:対象は研究の同意を得た関東・北陸の6施設、看護師37名であり、グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて認知症高齢者に看護を行ううえで困難を感じた体験を中心に半構成的インタビューを行った。逐語録から語られた体験の意味を検討のうえ命名し、カテゴリー化を行った。継続的比較分析によりカテゴリー間の関連性を検討した(以下、【】は主要なカテゴリー、「」[]はサブ・カテゴリーとして記述する)。結果・考察:医療施設での看護師の共通体験の主要なカテゴリーとして【目が離せない人に対する許容】、サブ・カテゴリーとして「責める気持ち」「嫌なことをしたのではないかという内省」「目が離せない入への慣れ」「認知症がそうさせている」を抽出した。すなわち、「目が離せない人に対する慣れ」は[認知症高齢者ケアの場での経験不足][受け入れられない期間]を経て[場数を踏む]ことにより看護師の[許容量の広がり][慣れの成果]を獲得するプロセスがあることが示唆された。また、看護師の共通体験から、「目が離せない人に対する慣れ」は認知症看護に不可欠な能力の一つとして示されており、促進するカテゴリーとして[受け入れるための準備][師長・同僚からのサポート]を抽出している。本研究の成果を認知症高齢者の看護のための教育プログラムに活用できると考え、最終年度はパンフレット「認知症高齢者の看護をサポートするために」を作成した。
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