QOLに関する文献検討を行うと同時に、これまでの研究成果を「前期高齢女性の近隣他者との交流関係と健康関連QOLとの関連」について分析を行った。また、近隣他者との交流関係を活用した主体的健康増進プログラムを作成するに先立ち、既存の関連研究を検索した。高齢者・仲間・友人・仲間・社会関係・健康をキーワードに、高齢者の健康増進プログラムについて情報を得た。そのうち、宮城県大和町における高齢者の介護予防・健康増進事業について、保健師と社会福祉士、および大学の研究者2名を対象に、視察およびヒアリングを行った。更に、介入を行うことにより、フィールドとなる地域社会全体への波及効果や、貢献のあり方について検討するため、American Public Health Associationの継続教育セミナーに参加し、公衆衛生分野で注目を集めているCommunity-Based Participatory Research(CBPR)について知見を得た。 1.加齢による身体や精神能力の低下を自覚する前期高齢女性にとって、同年代の同性の近隣他者との交流関係は、身体・精神的健康状態の認識の良し悪しに関らず、多側面の総体として自身の健康認識を維持するために、自ら価値づけている社会的側面であると考えられた。筋トレや認知予防教室など既存の介護予防事業に、近隣他者との交流を活性化させるプログラムを加える必要性が示唆された。 2.転倒予防教室への参加回数が多いほど、女性では主観的な幸福感や生活満足感、ソーシャルサポート尺度の得点が高まったことから、プログラムの回数、グループ人数、内容、実施場所などの示唆を得た。また、サロンの運営とCBPRの理念から、人と人とのつながり(関係性)、自分の地域(コミュニティ=地域の人々)への愛着、専門職の関りの姿勢など、交流活動を継続させる要素について示唆を得た。
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