団塊の世代の高齢期への移行に伴い、配偶者との死別後に独居への移行が増加している前期高齢女性を対象とした、日常生活における地域社会に根ざした主体的な健康増進支援を検討する必要がある。 本研究では、健康の社会的側面に焦点を当て、身近な地域社会における日常的な近隣他者との交流関係に着目する。日常生活において、物理的な近さや情緒的な親しみから、前期高齢女性自身が身近であると感じる同年代の女性同士の相互行為から継続的に取り交わす『気遣い合い的日常交流』を活用し、主体的健康増進プログラムを開発することをめざす。 今年度より、CBPR(CommunityBasedParticipatoryResearch)の理念・方法に則り、協働自治体と「前期高齢女性の近隣他者との交流関係を活用した主体的健康増進プログラムの開発」に取組んでいる。この共同実践研究事業の運営研究会において自治体保健師と試案プログラム「10年後の私たちの暮らし(未来予想図:未来の樹)を描こう!」を作成し、前期高齢者人口の急増が見込まれる振興開発住宅地区にて実施した。プログラム概要(1)日時:平成20年2月9目〜3月8日毎週土曜13:30〜16:00全5回(2)場所:地区小学校(3)参加者:50〜60歳代女性24人(延108人)スタッフ:10名(保健師・研究者・大学院生)。 インタビューおよび自由記載の内容からは、個人レベルでは老いに対する認識の変化や共感的な相互理解による安堵感と活力などが、集団レベルでは仲間意識の芽生えと10年後の自分たちの暮らしの備えとして今からできることへの志向が抽出された。その他データは基礎統計の段階であるが、QOL指標(気遣い合い的日常交流・ソーシャルサポート・主観的幸福感・健康認識等)の維持・向上の傾向が確認された。 次年度も継続評価を行い、日常生活における近隣他者との関係性の発展とQOLとの関連、および主体的な地域における健康増進活動について総合的に評価し、プログラムを改良する。
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