本年度は、訪問看護ステーションのナレッジ・リーダー育成プログラムの開発の初年度としてヘルスケアにおけるナレッジ・マネジメントの概念分析及び訪問看護事業管理者を対象としたナレッジ・マネジメントの認識や実態に関するアンケート調査票を作成した。ナレッジ・マネジメントの概念分析では、Rodgers(2000)のアプローチを参考に保健・医療、看護の領域におけるナレッジ・マネジメントの概念の使われ方をみるため、英文献はPubMedとCINAL、和文献は医学中央雑誌の検索システムを用い、タイトルにナレッジ・マネジメントを含む制限をつけ文献検索を行った。その結果、英文献236文献、和文献41文献が抽出され、収集した文献の20%(47文献)をサンプリングとして無作為抽出した。データ収集はRodgersが提唱している様式に従い、概念を構成する特性である属性、先行因子、帰結に関する記述を収集した。先行因子としては「情報科学の進歩」に伴いヘルスサービスの質の向上や改善のための「医療政策」や「組織のビジョン」が背景にあり、個別的な「臨床知の蓄積」へのマネジメントの必要性が高まった。属性としては、「知の転換のプロセス」、知の共有を促進する「学習の場」や「コミュニケーション」が抽出された。帰結は、電子カルテや医療情報ネットワークの構築に関するものが多く、そのため「組織としての形式知の構築」、「サービスの質向上」、「意志決定の支持」が抽出された。野中による知識創造プロセスモデルに照らし合わせるとヘルスケアにおいては知の表出化の段階に留まり組織としての知の共有化や創造までには至っておらず文献による概念化は困難であった。今後は訪問看護管理者を対象とした組織としての知の構築に関するアンケートの分析や聞き取り調査を含めヘルスケアにおけるナレッジ・マネジメントのプロセスや要件を明らかにする必要がある。
|