研究概要 |
訪問看護ステーションにおけるナレッジマネジメントの実践的研究の準備のために、訪問看護ステーションにおけるナレッジマネジメントの実態として臨床看護実践における知識の組織内継承に関する認識とその実態について、訪問看護ステーション管理者を対象に質問紙調査を実施した。調査方法は、郵送法による質問紙調査で研究者作成の自記式・無記名の質問紙を用いた。調査対象は、全国訪問看護事業協会加盟事業所(3,400ヶ所)を都道府県別に層化別無作為抽出した1,000ヵ所の訪問看護ステーション管理者とした。その結果、有効回答400(回収率40%)のうち、開設10年以上の事業所(43.6%)、設置主体は医療法人(43.4%)が最も多く、看護職員5人以上10人未満が42.2%、5人未満が41.9%で小規模な事業所の実態であった。管理者の事業課題として「スタッフ確保(47.1%)」と「事業所の収益(45.6%)」が高く、事業開発や質改善については低かった。また「ナレッジマネジメント」については「知らない」という回答がほとんどであった。実態としては事業所内のコミュニケーションは良好であるが、それは個別的な看護実践の検討のためであり、事業所の看護実践を積み上げ、分析し(データベース化、ベストプラクティスやベンチマーキング等)事業所の組織としての知識・技術の共有化や認識には至っていなかった。事業所は運営管理の維持に追われている状況であったが、一方では提供するサービスの質への問題意識(23・3%)もあった。今回の調査結果から、改善・発展の起動力となるであろうナレッジマネジメントの訪問看護事業所への適用のために、実践的研究のプロセスとして重要な臨床側の問題意識や主体的な参加の動機付けへの働きかけや仕組みづくりが研究の初期段階として重要であることが明らかになった。
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