研究課題/領域番号 |
18599003
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研究種目 |
特別研究促進費
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大川 和良 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助手 (80432540)
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研究分担者 |
竹原 徹郎 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (70335355)
平松 直樹 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (30362700)
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キーワード | B型肝炎ウイルス(HBV) / HBV変異 / 環状2本鎖(RC)HBV DNA |
研究概要 |
研究者らは予備的検討において、B型慢性肝炎の急性増悪をきたした1症例における急性増悪1年前(P1)と急性増悪後(P2)の血清サンプルからそれぞれHBV全長のサブクローニングを行い、得られたHBV P1株、P2株のin vitroでのRC HBV DNA合成能がP1株に比しP2株において上昇していることをすでに明らかにしていた。これを受けて、本年度はP1、P2両株間のRC HBV DNA合成能の差がいかなるウイルス変異に起因しているかを主として検討した。P1、P2両株のキメラ解析により責任領域を約800bpまで絞り込んだ後、この範囲で候補となるウイルス変異13箇所それぞれの変異を導入したHBV株の発現系を作成して検討した.その結果nt2790のG(P1株)からA(P2株)への変異がRC HBV DNA合成能の増加の直接原因であることが明らかとなった。HBV野生株ではこの部の塩基はP2株と同じAであることより、本症例においてはG2790変異により低下していたRC HBV DNA合成能が、再度の変異により野生株と同じA2790に復することにより相対的にRC HBV DNA合成能が上昇し、その結果疾患の急性増悪が引き起こされたと考えられた。Liuらはnt2820-2998の範囲はRC HBV DNA合成に強い影響を与えるcis領域であることを報告しているが(J Virol 2004;78:642)、本研究で同定された変異はこの部の近傍に存在していることから非常にreasonableな結果であると考えられた。そこでこの領域のHBV変異の普遍性についてさらに検討するために、40例のB型慢性肝炎症例を対象として血清からHBV DNAを抽出し、nt2820-2998とその周辺領域の塩基配列の検討を行ったところ、約半数の症例でこの部に何らかの変異が検出された。来年度はこれらの変異の意義についてさらに検討する予定である。
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