研究概要 |
(1)Sema3Aの血栓形成および動脈硬化におよぼす影響に関する検討 Sema3Aのin vivoにおける大量の発現を実現するためにSema3A-adenovirusの作成を行った。血栓形成のin vivoモデルとして、エバンスブルーを投与したマウスの頚動脈にHe-Neレーザーを照射することにより、照射部位に形成される血栓形成を経時的にモニターするシステムを用いることにより、Sema3A-adenovirusを投与したマウスおよびコントロールマウスにおいて、この血栓形成に対するSema3Aの効果に関する検討を行った。 (2)Sema3Aの血小板機能抑制メカニズムに関する検討 トロンビンおよびコラーゲン刺激に対するSema3Aの影響を検討した。トロンビン刺激においては、トロンビン受容体からのシグナルとともに、分泌されたADPがP2Y_12受容体に結合することにより生じるシグナルが協調的に働く。トロンビン受容体の活性化はPLCβを活性化し、PKC活性化および細胞内Ca<++>濃度の変化を導くが、Sema3Aはこの系路に影響を与えなかった。一方、Sema3AはP2Y_<12>により活性化されるPI3-kinaseの下流に存在するAKTおよびRapの活性化を著明に抑制した。コラーゲンはGPVI/FcRγに結合し、Src, SykなどのKinase蛋白とLAT、SLP76などのadaptor蛋白を介してPLCγ2を活性化する。Sema3AはGPVI特異的なアゴニストであるconvulxinにより誘導されるSyk, LAT, SLP76のリン酸化に影響を与えなかった。しかし、Sema3Aはトロンビンの際と同様にconvulxinによって誘導されるAKTおよびRapの活性化を著明に抑制した。また、興味深いことにP2Y_<12>拮抗薬によってもAKTおよびRapのリン酸化が抑制された。以上の結果から、Sema3Aはアゴニストに関わらず、P2Y_<12>依存性と考えられるPI3kinaseの活性化を抑制することが明らかとなった。
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