マウス心負荷モデルの左心室よりcDNAライブラリーを作製し、酵母を用いて心肥大に関与するG蛋白活性調節因子の同定を試みた。 1.心負荷モデル動物の作製:(1)圧負荷心肥大モデル:マウス上行大動脈を絹糸にて縮窄し、左心室圧負荷モデルを作成した。手術1週間後に心臓を摘出、心肥大(心室重量の増加)のみられた16匹の左心室よりcDNAライブラリーを作製した。(2)頻脈モデル:埋め込み型浸透圧ポンプを用いて非選択的アドレナリンβ受容体刺激薬であるイソプロテレノールを60ug/9/dayで1週間持続注入をおこなった。1週間後に心肥大のみられた18匹の左心室よりcDNAライブラリーを作製した。 2.cDNAライブラリーの作製:それぞれのプールされた左心室からmRNAを抽出しcDNAを合成、酵母発現ベクターにクローニングし酵母によるスクリーン用のcDNAライブラリーを作成した。 3.酵母による機能的スクリーン:作成したcDNAライブラリーを酵母系に導入し、機能的スクリーンを行った。この酵母系ではG蛋白共役受容体が欠如しており、酵母G蛋白の代わりにヒトGαi3、ラットGαSあるいはヒトGα16が発現しており、cDNAライブラリーにより導入された蛋白がG蛋白を活1生化すれば酵母が増殖するようにG蛋白刺激伝導系に修飾が加えられている。今回はGαi3、GαS、Gα16が発現している酵母を用いて圧負荷心肥大モデル、頻脈モデルの左室心筋由来のcDNAライブラリーをスクリーンした。既報G蛋白活性調節因子であるAGS2、AGS3、RGS12の同定に加え、同一機能蛋白群に属する3種類の新規G蛋白活性調節因子候補蛋白の検出に成功した。平成19年度は同定されたG蛋白活性調節因子候補蛋白の機能解析を進め、これら蛋白とG蛋白との直接相互作用、活性調節作用、細胞生理機能の検討を行う予定である。
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