研究課題
基盤研究(C)
G蛋白共役受容体を介する情報は、細胞における非常に重要な情報伝達系であり、疾病の発症・進展に密接に関与する。近年の研究は、G蛋白が、細胞内で受容体以外の蛋白(G蛋白活性制御因子)によって活性化されることを明らかにした。申請者は心筋虚血下で発現する新規G蛋白活性制御因子を同定したが、本研究は、これを発展させ、頻脈モデル、心肥大モデルから病態特異的に発現する新たなG蛋白活性制御因子を同定することを目的とした。マウス心負荷モデルの左心室よりcDNAライブラリーを作製し、特殊な酵母システムを用いて心肥大に関与し得るG蛋白活性調節因子の同定を試みた。圧負荷心肥大モデルは上行大動脈縮窄により作成し、手術1週間後に左心室を摘出した。頻脈心負荷モデルでは埋め込み型浸透圧ポンプを用いてアドレナリンβ受容体刺激薬であるイソプロテレノールを1週間持続注入し左心室を摘出した。それぞれの16匹および18匹の左心室からmRNAを抽出しcDNAを合成、酵母発現ベクターにクローニングしスクリーン用cDNAライブラリーを作成した。作成したcDNAライブラリーを酵母に導入し、機能的スクリーンを行った。この酵母系ではG蛋白共役受容体が欠如し、酵母G蛋白の代わりにヒトGαi3、ラットGαSあるいはヒトGα16が発現している。さらにcDNAライブラリーにより導入された蛋白がG蛋白を活性化すれば酵母が増殖するようにG蛋白刺激伝導系に修飾が加えられている。スクリーンの結果、既報G蛋白活性調節因子であるAGS2、AGS3、RGS12の同定に加え、同一機能蛋白群に属する3種類の新規G蛋白活性調節因子候補蛋白の検出に成功した。現在、同定した蛋白とG蛋白との直接相互作用、活性調節作用、細胞生理機能等機能解析を進めている。
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