研究課題
【背景】がんの転移や浸潤のメカニズムに関してはさまざまな研究がなされ、宿主-腫瘍間の相互作用の重要性が認識されるようになっている。一方、肺癌が進行して胸膜播種、転移を生じることは稀ではないが、その詳しいメカニズムに関する検討は少なく、ストローマ細胞と癌細胞の相互作用に関する研究もほとんどない。【目的】マウスにおいて実験的胸膜播種巣形成モデルを作成し、原発巣由来のストローマ細胞が胸膜播種巣の形成に関与しうるか否かを検討する。【方法】全身の組織や細胞が緑色蛍光を発するGFPマウスにマウス肺癌細胞株Lewis lung carcinomaを皮下注射して腫瘍を作る。腫瘍は緑色蛍光を有するストローマ細胞を取り込みながら成長する。得られた腫瘍をミンスして、癌細胞とストローマ細胞から構成される細胞集塊(直径40〜100μm)を作成する。これを約1000個、野生型マウスの胸腔に移植し、数日後にマウスを犠牲死させ、蛍光顕微鏡にて観察する。【結果】ストローマ細胞を含む細胞集塊の移植後1日目には胸腔内に微小播種病巣が形成された。蛍光顕微鏡で観察すると播種巣内に緑色蛍光を発するストローマ細胞を確認することが出来た。移植された緑色蛍光のストローマ細胞は移植後5日後まで観察することが出1来た。【考察及び結論】マウスの実験的胸膜播種モデルにおいて癌細胞がストローマ細胞と共に微小な播種病巣を形成することが確認された。癌細胞の増殖に適した微小環境を提供することにより、原発巣由来のストローマ細胞が播種巣形成の初期に関与している可能性が示唆された。
すべて 2007
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肺癌 47
ページ: 793-794
日本呼吸器外科学会雑誌 21
ページ: 850-853