研究課題
がん転移のメカニズムに関してはさまざまな研究がなされ、宿主-腫瘍間の相互作用の重要性が認識されるようになっている。腫瘍を構成するがん細胞以外の宿主側のストローマ細胞(間質細胞)には線維芽細胞・筋線維芽細胞などの間葉系細胞、単球・マクロファージなどの免疫細胞、血管内皮細胞や様々な前駆細胞などが挙げられる。研究代表者たちは肺癌細胞と共に原発巣由来のストローマ細胞が肺に到達して肺転移巣を形成することをマウスモデルを作成して実証した。がん細胞と原発巣のストローマ細胞をそれぞれ赤と緑の蛍光蛋白で標識してマウス転移モデルを新たに作成することにより、原発巣由来のストローマ細胞と転移巣での新しいストローマ細胞を区別することが可能となった。原発腫瘍ががん細胞だけでなくがん細胞とストローマ細胞とで構成された細胞集塊を血流に放出していること、肺に到達したストローマ細胞はがん細胞とともに微小転移巣を形成することを明らかにした。更に実験的肺転移モデルでは原発巣由来のストローマ細胞を含む細胞集塊の方が転移形成能が高いことが明らかとなった。またストローマ細胞を含む細胞集塊内のがん細胞はviabilityが高いことも明らかとなった。生体で転移が実際に成立する際に、増殖に適した微小環境を作り出す原発巣のストローマ細胞ががん細胞とともに転移先に到達し、がんが転移巣を形成出来る確率を高めていることが示唆された。原発巣を構成するストローマ細胞が、がん細胞と共に細胞集塊を形成して転移先に到達し、原発巣と同様の微小環境を早期に提供することによって、転移巣形成の初期段階で重要な役割を果たしていると考えられた。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Journal of Surgical Research (E-pub ahead)
Interact Cardiovasc Thorac Surg 7(6)
ページ: 1114-1120