本年度は研究課題に関する基礎的な視点・手法に重点をおいて研究を行った。本研究においては、都市社会学が実証研究において十分に取り組んでこなかった空間概念を導入し、GISを用いた研究を行うこと、また、この手法により明らかになる空間構造の動態を踏まえて都市政策、特に住宅政策について検討することとしている。 そのためにまず、理論的な検討として都市社会学における空間概念の導入のありかたについて検討を加えた。この成果は第17回人文地理学会都市圏研究部会研究会において「都市社会学における地理的概念」(2006年5月、於キャンパスイノベーションセンター、都市間比較研究会との共催研究会)と題する報告を行い、その要旨は『人文地理』58巻5号に掲載された。ここでは都市社会学が都市を扱う際には具体的な空間を持つ都市よりも社会変動としての都市化に焦点を当ててきた結果空間概念を十分に取り込んでこなかったことを明らかにし、こうした研究の方向に対し、GISを用いた空間概念の導入が有効であることを指摘した。また、都市社会学における住宅政策を扱う視点の検討については、「家族・地域・住宅--住宅への社会学的アプローチ」(季刊住宅土地経済NO.61)を執筆し、社会学が明らかにしてきた家族や地域の変動を、住宅政策との関連のなかで検討する必要があることを主張した。 一方、実証すべき課題である東京の都市空間構造の動態については、国勢調査をはじめとする各種資料を整理し、その一部は地図化を実施している。あわせて、分析手法の検討を行い、クラスター法による分析についてその効果を検証している。
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