研究概要 |
2007年度は2006年度に検討した社会学における方法としての社会地図分析の戦略的方向性と,住宅政策の社会学的分析枠組みを踏まえて,収集したデータを用いて分析をおこなった。 空間構造の変容については,主に国勢調査データを用いて,人口移動,年齢別人口,世帯類型,階層について地理情報システム(GIS)を用いた社会地図分析を行った。この際には,2007年12月に公開された2005年の東京都区部データも分析対象としたことで,1990年代後半以降,今日に至る再都市化の本格的進行に伴う社会空間構造の流れと特質を確認することができた。また,各区の住宅政策の分析の前提として住宅・土地統計調査のデータを用いて,都区部の住宅に係る空間構造(新築住宅比率,所有形態,構造,面積など)を明らかにしうえで,上記社会構造と住宅分布の特性にかかわる変数を用いて,クラスター分析を行い,地域の類型化を行った。 クラスター分析の結果,4つのクラスターが析出された。ここで析出されたクラスターごとに住宅政策の展開を検討した。主に各区の住宅マスタープランの内容および枠組みについて分析を加えた結果,(1)各自治体は市場化の流れのなかで問題を認識し住宅政策を展開していること,(2)各区とも「ファミリー層」のような「望ましい」住民像を設定して展開されていること,(3)公営住宅のあり方が,国の住宅政策の転換との関連で大きな問題となっており,特に低階層地区では公営住宅が地域の活力を低下させるものとされ,戸数を減らす方向が打ち出されていること,などの点を明らかにした。
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