本研究は、東京大都市圏中心部としての東京23区に焦点をあて、1)バブル経済期以降、今日にいたるまでの社会空間構造の変化を追跡するとともに、2)このような社会空間構造の変化と基礎自治体としての各区の住宅政策にどのように関連しているのかを明らかにした。 社会地図を用いた空間分析および住宅政策については、ともにこれまで都市社会学における十分な先行研究の蓄積がないことから、分析に先立って都市社会学で社会地図を用いる戦略的意義、および住宅政策に対する社会学的アプローチについて検討を加えた。 空間構造の変容については、主に国勢調査データを用いて、人口移動、年齢別人口、世帯類型、階層について社会地図による分析を行った。特に、2007年12月に公開された2005年の東京都区部データも分析対象としたことで、1990年代後半以降の「再都市化」に伴う社会空間構造の流れを確認することができた。 また、各区の住宅政策については、前提として住宅・土地統計調査のデータを用いて、都区部の住宅に係る空間構造(新築住宅比率、所有形態、構造、面積など)を明らかにした。そのうえで、上記社会構造と住宅分布の特性にかかわる変数を用いて、クラスター分析を行い、地域の類型化を行った。 クラスター分析の結果、4つのクラスターが析出され、このクラスターごとに住宅政策の展開を検討した。その結果、各自治体は市場化の流れのなかで問題を認識し、「望ましい」住民像を設定して展開されていること、また、このなかでは特に公営住宅のあり方が焦点化されていることを明らかにした。
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