本年度の研究では、日本、台湾、中国の小学校5・6年児童の自己効力感とコミュニケーション様式の因子をSPSSを使用した因子分析によって抽出した。その結果「仲間関係及び自己に対する効力感」「自己主張の抑制」「他者中心のコミュニケーション」の三つの因子を得た。「仲間関係及び自己に対する効力感」は、自己効力感尺度を核とする因子であり、下位尺度得点の平均は三つの因子の中で最も高かった。児童が仲間関係と自己の双方に対して強い(自己)効力感を有することが分かった。「自己主張の抑制」は、児童に対して自己主張を抑制するように働きかける因子であり、下位尺度得点の平均は三つの因子の中で最も低かった。「他者中心のコミュニケーション」は、児童のコミュニケーション様式が他者中心であることを示す因子であり、下位尺度得点の平均は三つの因子の中で2番目に高かった。 各因子の相関の分析は、SPSSの相関分析を使用して行った。結果は、「仲間関係及び自己に対する効力感」と「自己主張の抑制」は有意な負の相関を示し、「仲間関係及び自己に対する効力感」と「他者中心のコミュニケーション」は有意な正の相関を示した。これは、児童の自己主張の抑制を緩和し、他者中心のコミュニケーションを高めることによって、児童の効力感が高められる可能性を示唆するものであると考える。 児童の自己主張の抑制を緩和し、他者中心のコミュニケーションを高めることによって、児童の効力感が高められる可能性が示唆されたが、自己抑制が日本人ほど強くない中国人児童や台湾児童との交流を深めることによって、日本人児童の自己主張の抑制が緩和されることが期待できる。
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