総合的学習は実際の科学、技術的知識がそうであるように、教科の枠にとらわれず、総合的にテーマを学習する良い機会を提供している一方で、実践の中で「体験のしっぱなし」、「ふりかえりの不十分さ」がしばしば批判されてきた。これらの批判に応え、反省性、継続性、さらに教科学習への埋め戻しをできるようにするためには、単にテキストや教材、カリキュラム計画などを作成するだけでなく、それを超えて、効果的な実践を行い、さらにそれが継続的な効果を持つような社会-技術的なネットワークを構築することを可能にするようなモデルを提供する必要がある。 本研究では多くの学校で採用可能で、かつ継続的な実践が可能な学習環境のデザインを目指した。そのために地震防災というテーマをとりあげ、小中学生らが地域のフィールド・ワークをすることに伴って、地域の様々なグループ、コミュニティを結びつけるネットワークを生成・構築することで、継続性ある学習環境をデザインした。またそのようなネットワークを支えるコミュニケーション・ツールとしてNOTAというウェブシステムを導入した。授業時間外の自発的な活動によるいくつかのパイロット研究を踏まえて、研究期間中に小学校2校の6年生各1クラス、および中学校1校の1年生4クラスで総合的学習の時間のカリキュラムを各校の担任やその他の教員らと連携して実施した。 主な知見は以下の通り。(1)適切なテーマやアレンジによって学内外の実践のコミュニティをリンクすることで新しい社会-技術的な「学習のネットワーク」の構築は比較的容易に可能である。 (2)学習環境を再デザインすることで児童のいっそうの主体的な学びを促すことができる。 (3)インターネットやNOTAの利用過程の分析から、情報教育にはオンタイムの教示が有効である。以上。
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