研究課題
基盤研究(C)
食品中の下痢原性大腸菌(DEC)を迅速適確に検出するには、増菌後の培養液を試料とする効率的なスクリーニング方法を確立する必要がある。志賀毒素産生性大腸菌・腸管毒素原性大腸菌・腸管病原性大腸菌・腸管侵入性大腸菌・腸管凝集接着性大腸菌・分散接着性大腸菌・EAST1遺伝子保有大腸菌の8種類の病原遺伝子(stx1、stx2、eae、est(STp)、est(STh)、elt、aggR、astA、virB、afaB)を標的として、リアルタイム・マルチプレックスPCR法の応用を試みた。設計したプライマーおよびプローブは十分な特異性を示し、100株の大腸菌株およびその他の細菌株を用いた試験において、偽陽性を示した菌株はなかった。偽陰性を示す志賀毒素産生性大腸菌が1株あったが、プライマーとの反応および遺伝子の増幅に異常が認められなかったことから、プローブ結合部位の塩基配列に変異があり、そのためにリアルタイムPCR装置が増幅反応を検知できなかったものと考える。純培養菌液を用いた各マルチプレックス・リアルタイムPCR法の検出限界は、遺伝子の種類により異なったが約10^3-10^4cfu/mlであり、良好な感度を示した。また、マルチプレックス反応時に遺伝子間で初期鋳型量に大きな差がある競合的な条件下(各病原遺伝子陽性株のテンプレートDNAの割合が10^5:1または10^6:1)でも、濃度差がない場合と同程度に検出および定量することが可能であった。試験的に148件の食品増菌培養液をスクリーニングしたところ41検体(28%)から上記の病原遺伝子が検出された。本手法はDECの網羅的スクリーニングに極めて有効な手段になると期待され、19年度は本手法を用いて広範な疫学調査を実施する予定である。
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