研究概要 |
植物性エストロゲンが神経系の機能タンパク質に影響を及ぼす発現濃度ついて交感神経系のモデルとして薬物の影響の解析に広く用いられている培養ウシ副腎髄質細胞を用いて生化学的に検討した。 カテコールアミン生合成とチロシン水酸化酵素(TH)活性をイソフラポン類のダイゼインはアジア系の人々の血中濃度として検出されうる濃度(10nM〜1μM)で促進した。この作用はエストロゲン受容体の阻害剤であるICI182,780では抑制されなかったが,PKA阻害剤のH-89やMEK阻害剤のUOI26では抑制が認められた。細胞膜にはダイゼイン等の植物性エストロゲンやエストロゲンの結合する受容体が存在し,ダイゼインはこの受容体を介してカテコールアミン生合成を促進している可能性が示唆された。現在,この受容体の同定を検討している。 レスベラトロール(100μM)は電位依存性Na チャネルα-subunitsのsite4に,電位依存性Ca チャネルのN-typeに作用してカテコールアミン分泌を抑制した。神経由来のニコチン性アセチルコリン受容体(α3β4)を発現させたアフリカツメガエル卵母細胞でもアセチルコリンにより誘発される Na電流(IC_<50>=25.9μM)を抑制した。このような比較的高濃度ではイオンチャネル等に直接作用している可能性が示唆された。 ノルエピネフリントランスポーター(NET)機能はイソフラボン類のゲニステインやフラボノール類のケルセチン(100nM〜10□M)によって作用時間依存性(24〜72h)に促進されたが,ダイゼイン,クメストロール,トランススチルベン骨格を有するレスベラトロール(100□M)は影響しなかった。この作用は細胞膜へのNETの発現量を増加させた結果であった。 以上の結果を基にしてカテコールアミンミ神経系の分化、発達過程での植物性エストロゲンの影響についてマウスを用いて検討中である。
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