研究概要 |
土壌や食糧における汚染が問題となっているヒ素について、植物内でのヒ素の吸収・蓄積の動態を可視化することは重要である。そこで、リアルタイムイメージング可能なポジトロン放出ヒ素トレーサ及び^<72>Se/^<72>Asジェネレータシステムの開発を目的として、本研究を開始した。初年度である平成18年度は、ジェネレータシステムの開発における基礎的知見を得ることを主眼として以下の研究を実施した。 1.^<72>Seを製造するための実用的な核反応を選抜するため、^<72>Seの生成量に注目して、天然同位体組成のGe及びAsにそれぞれ50MeVのα粒子ビームと65MeVの陽子ビームを入射した。その結果、Geターゲット中に^<70>Ge(α,2n)反応、Asターゲット中に^<75>As(p,4n)反応を主とする^<72>Seの存在を確認した。^<72>Seの生成量は、^<75>As(p,4n)反応の方が^<70>Ge(α,2n)反応に比べて4倍程度高いこと、いずれの核反応についても理論値の1/10程度であることが明らかとなった。来年度は、Asターゲットの最適照射条件、並びに、生成量以外の諸条件(副生成物、ターゲットからの分離操作)を検討し、^<70>Ge(α,2n)^<72>Se-^<72>As反応による製造法と総合的な比較を行う。 2.ジェネレータシステムの開発に向けた化学分離法の基礎的条件を決定するために、数日程度の半減期を持つSe及びAs核種の簡便な生成法を検討した。その結果、KBrターゲットに高エネルギー陽子ビームを入射することで、同時に無担体で^<75>Se及び^<74>Asを水溶液中に得ることに成功した。得られた放射能量は、65MeVの陽子ビームを1μAで1時間照射した場合、100kBq(^<75>Se)、120kBq(^<74>As)であった。来年度は、これらのトレーサを用いて化学分離法の検討を行う。
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