研究概要 |
分析法の構築 5,6-ジヒドロチミジンの測定にはLC/MS/MSを使用し、分離カラムにはC18、移動相には0.1%酢酸とアセトニトリルのグラジエント溶出を採用し、検出はESI法でイオン化し、生成するm/z245(M+1)を分解して生じるm/z117を測定し、標準品の検出限界値は約2ng/mL程度であった。 DNAの抽出は、植物と動物試料をなるべく同じような条件で扱うために、試料にCTAB/JAS溶液を加え、ポリトロンでホモジナイズしてから、50℃で加温・振とう抽出した。DNAとして100μgの収量を目標としたため、市販キットでは負荷できる試料量の許容量を超えた。そのため精製には、フェノール+クロロホルムとの分配抽出を行い、アルコール沈殿により濃縮した。さらにRNAの除去、DNAの分解、リン酸の除去などを酵素処理によりヌクレオシドを得た。 指標適性確認 5,6-ジヒドロチミジンの指標適性については、チミジンと鮭精子DNA水溶液にγ線を照射したところ、共に照射線量依存的に5,6-ジヒドロチミジンの生成を確認した。非照射チミジン(市販試薬)中には全く検出されなかったが、鮭DNA中にはLC/MS/MSの検出限界以下の痕跡が検出された。その濃度は5mg/mLのDNA液で約2ppb以下であるが、ブランク値が存在する可能性が示唆された。一方1kGy照射による生成は100ppbレベルであり、照射の有無を明確に区別できた。日常的な環境下で5,6-ジヒドロチミジンが生成する可能性を検討するために、加熱(オートクレーブ)、紫外線照射などを行ったが、それらによる生成は認められなかった。試薬による化学反応では、水素化ホウ素Naによる水素化反応で、数十ppbレベル生成したが、同じ還元剤でも亜硫酸水素Na処理では生成が無く、酸化剤である過酸化水素処理でも生成が認められなかった。5,6-5,6-ジヒドロチミジンの検知指標性は高いと結論した。
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