幼児期には、自然な発達の過程として午後の昼寝が消失していく。ところが、日本の保育園では、保育所保育指針に基づいて午後に平均90分の昼寝が幼児に課されている。通常では殆どの子どもが昼寝をとらなくなる五歳児の段階でもほぼ一律に午後の昼寝が課されていることで、自然に昼寝が消失している幼稚園児と比較して保育園児では夜間睡眠の開始時刻(就床時刻)が有意に後退していることが我々のこれまでの睡眠表などの調査法を用いた研究により明らかにされている。 今回の研究では、活動量の連続記録という客観的な指標を用いて保育園児の睡眠覚醒リズムが、午後の昼寝によってどのような影響を受けているかを検討した。34名の保育園児を対象に、保育園で昼寝を課されている平日の二日間と昼寝のない週末の二日間にわたって活動量の連続記録を行った。なお、5歳児においては午後の昼寝が行われていない保育園があった。 その結果、平日の記録で昼寝を取っている4歳児の方が昼寝をとっていない5歳児よりも、夜間睡眠の開始時刻(就床時刻)が有意に遅く、4歳児の平日(昼寝あり)と週末(昼寝無し)の比較においても、昼寝のある平日の方が昼寝のない週末よりも夜間睡眠の開始時刻(就床時刻)が有意に後退していた。 また、ある先行研究において、昼寝のあった日の夜に幼児の夜間睡眠中の粗体動(中途覚醒)が増加しているという報告があったため、今回のデータでも夜間睡眠中の平均活動量の比較を行ったが、昼寝の有無にともなう差は認められなかった。夜間睡眠中の活動量は、発達に伴って低下していく傾向が認められた。午後に課される昼寝は夜間睡眠の開始時刻の後退を招き、幼児の睡眠習慣の夜型化を促す要因であると考えられるが、夜間睡眠中の中途覚醒を増加させるという影響はないものと考えられた。
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