研究概要 |
睡眠障害の発症に関わる神経生理学的機構の理解を目的として、正常ラットを用いたオレキシン神経伝達系の睡眠覚醒調節への関連と摂食調節に関与するモチリンとグレリンの睡眠覚醒への役割の検証、2)遺伝子操作によるドパミン神経系に異常を持つマウスの睡眠様式を解析することで、ヒトRBD様の行動や睡眠異常について検証した。 オレキシンA(0.5nmol/h)を環境の明期に5時間かけて脳室内に持続投与すると、強い覚醒作用を発現した。OX2RアンタゴニストとオレキシンAの組合せ投与実験では、OX2Rアンタゴニストの前処置によりオレキシンAの覚醒作用が抑制されることが判明した。したがって、オレキシンの覚醒作用発現にOX2Rが深く関与していることが示唆された。 モチリン(1,10,50,100nmol)を環境の明期にラット第3脳室内へ5時間かけて持続投与すると、モチリンは100nmo1投与で有意な覚醒量の増加が見られた。グレリンは10nmol投与で覚醒作用を発現することがすでに判明している。また、オレキシンは5nmolの投与で覚醒作用をもつことをすでに報告している。本研究で、摂食ペプチド類が睡眠覚醒調節に関与することが明らかとなった。 黒質ドパミン神経細胞が約半数に減少したα-syncreinトランスジェニックマウス(Tg)は野生型に比べて睡眠覚醒の各ステージにおける持続時間が減少していた。さらに、ヒトPD治療に使われるL-DOPAやペルゴリドに対するTgの反応性に統計的有意な変化は検出されなかった。また、RBD様の現象も確認できなかった。PD動物モデルとしての有用性についてα-syncreinマウスのさらなる検証が必要である。
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