研究課題/領域番号 |
18603005
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
勢井 宏義 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40206602)
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研究分担者 |
近久 幸子 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00452649)
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キーワード | 睡眠 / 体温 / 学習 / 時計遺伝子 / 朝型・夜型 / PPAR-alpha |
研究概要 |
我々はまず、clockの学習・記憶に関わる役割を見るため、clock遺伝子変異マウスにおける記憶・学習能を観察した。clock遺伝子変異マウスは「夜型」リズムを呈する。行動実験の結果、変異マウスにおいては海馬に関わう記憶・学習能が低下していることが明らかになった。 一方、Oishiらは、PPAR-alphaのリガンドであるbezafibrateが、マウスの行動リズムを前進させることを明らかにしていた。特に、夜型マウスであるclock遺伝子変異マウスのリズムも前進させ朝型リズムに変化させることは注目に値する。そこで、我々は、PPAR-alphaの睡眠・体温への関与を検討した。その結果、bezafibrateの2週間経口摂取によって、睡眠や体温リズムは行動リズムと同様に2〜3時間、前進した。体温は暗期の後半に1度近い低下を示した。また、ノンレム睡眠の深さの指標である脳波デルタ波のパワーが増大した。さらに、6時間の断眠によって、本来なら見られるデルタ波のパワーのリバウンドがbezafinbrate投与群では見られなかった。脳視床下部のDNAマイクロアレイによる網羅的解析とリアルタイムRTPCR解析から、neuropeptide YおよびPOMCのmRNAが有意に変化していることが分かった。neuropeptide Yは生物時計に作用して位相を変化させることが多く報告されている。また、torporと呼ばれる冬眠類似状態においては、その体温低下に深く関わっていることも報告されている。bezafibrateによる暗期後半の低体温は、脳内のneuropeptide Yが関与している可能性がある。以上のように、PPAR-alphaのリガンドは、体温・睡眠リズムの位相前進、体温の低下、睡眠期のデルタ波増強、断眠に対する耐性を引き起こすことが明らかとなった。
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