研究課題
基盤研究(C)
脳内には4つのアデノシン受容体サブタイプが存在し、A_1受容体(A_1R)とA_<2A>受容体(A_<2A>R)が睡眠誘発に関与すると考えられてきた。我々は、野生型(WT)マウスとA_1RとA_<2A>Rの遺伝子欠損(KO)マウスとの睡眠構造の変化を調べた。WTマウスと比べて、A_1R-KOマウスの睡眠は変化が見られず、WTマウス同様、断眠後にノンレム睡眠(NREM)とレム睡眠(REM)の量が増加した。しかし、A_<2A>R-KOマウスは夜間活動時のNREMとREMの量がわずかに多く、断眠後のNREMの増加は見られなかった。さらに、A_1R作動薬をWTマウスの脳内に投与しても睡眠量は変化しなかったが、A_<2A>R作動薬は強力なNREM睡眠を誘発した。一方、A_1RおよびA_<2A>Rに対して同等の結合親和性を持つ拮抗剤であるカフェインを、睡眠期のWT、A_1R-KO、A_<2A>R-KOマウスの腹腔内に投与すると、A_1R-KOマウスはWTと同様に覚醒を起こしたが、A_<2R>-KOマウスは覚醒を起こさなかった。また、カフェインはA_1R-KO及び町マウスの線条体のphospho-Thr75-DARPP-3を増加させたが、A_<2A>R-KOマウスでは変化を起こさなかった。以上の結果は、カフェインの覚醒作用がA_<2A>Rの阻害によることや、アデノシンによる睡眠誘発はA_<2A>Rとphospho-Thr75-DARPP-3により調節されることを示す。次に、A_<2A>Rが大量に分布する側座核にキノリン酸を投与して神経変性を行い、側座核損傷による睡眠覚醒の変化とドーパミン量との関連性を調べた。その結果、側座核の損傷による睡眠の変化は、A_<2A>KOマウスに類似していることが判明した。この結果は、側座核がアデノシンやA_<2A>Rアゴニストによる睡眠誘発に関与する部位であり、睡眠調節に重要な役割を果たすことを示している。
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