研究分担者 |
裏出 良博 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究部長 (10201360)
早石 修 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究員 (40025507)
曲 衛敏 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究員 (20332231)
和田 雅史 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究員 (80421379)
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研究概要 |
Prostaglandin D2は脳基底部のアデノシンを遊離させ、睡眠を誘発する。脳内には4つのアデノシン受容体(R)サブタイプ(A1,A2A,A2B,A3)が存在し、そのうちAIRとA2ARについて睡眠誘発への関与が報告され、論争が続いている。我々はA2AR作動薬の投与が、ノンレム睡眠を顕著に増加させることを明らかにしてきた。A2AR作動薬は睡眠中枢である腹側外側視索前野(Ventrolateral preoptic area,VLPO)の活動を亢進し、GABA作動性神経を介してヒスタミン系覚醒中枢である結節乳頭核(Tuberomammillary nucleus,TMN)の活動を抑制する。一方、A1R作動薬を側脳室に投与しても睡眠量に変動は見られず、AIRの睡眠誘発メカニズムは明確ではなかった。 我々は、アデノシンを代謝するアデノシンデアミナーゼが脳実質ではTMNのヒスタミン神経に非常に限局して発現していることに注目し、睡眠覚醒調節におけるアデノシンの機能を調べた。ラットTMNにアデノシンデアミナーゼ阻害剤を投与すると、ノンレム睡眠が用量依存的に有意に増加した。そこでTMNにおけるアデノシン受容体の分布を調べたところ、AlRの発現がヒスタミン神経において免疫組織化学的に検出された。続いて選択的AlR作動薬によってTMNを刺激すると、ノンレム睡眠が用量依存的に有意に増加した。またTMNへのA1R作動薬投与は前頭皮質におけるてヒスタミン遊離を抑制した。以上の結果は、アデノシンがA1Rを介してヒスタミン神経を直接抑制してノンレム睡眠を誘発することを示しており、さらにAlRが睡眠誘発において領域特異的に機能していることを示唆している。
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