研究概要 |
平成19年度は、ナルコレプシーおよび真性過眠症についてのアンケートの発送と回収を行った。回収率を高めるために、昨年度行った反復性過眠症および特発性過眠症の未回答アンケート対象者を含めてアンケート再郵送も行った。最終的に、反復性過眠症は全対象症例82例のうち29例(回収率31%)、特発性,過眠症は全対象症例42例のうち20例(回収率29%)、ナルコレプシーは全対象症例951例のうち宛先不明者306例、回収できたものが370例(回収率39%)、真性過眠症は全対象者580例のうち宛先不明者212例、回収できたものが134例(回収率23%)であった。回収率の低さは、初診から10-40年を経過し中断例を含めた調査の限界と考えられた。 ナルコレプシー群について、通院中断群の臨床特徴を明らかにするため、関連項目に欠損値のないサンプルを用いて解析を行った。現在通院している症例は230人で通院を中断している症例は79人となり、この2群の臨床症状を比較したところ、眠気が完全に消失するもの(通院群4.0%,非通院群13.2%)、情動脱力発作が完全に消失するもの(10.3%, 13.5%)と非通院群で有意な予後改善がみられた。症状の重症度の変化についても、眠気改善(66.4%, 78.6%)、情動脱力発作改善(62.5%, 75.8%)と非通院群で有意に改善が多かった。逆に日常生活上の困難改善(86.1%, 73.0%)は通院群の方が有意に多かった。ナルコレプシーにおける眠気・情動脱力発作は、完全消失する割合は少ないが、約70%は経過とともに改善し、QOLの改善が見られることが確認された。また非通院群に軽症例が多いと予測され、従来の「ナルコレプシーは不治の病」という通説を否定する知見が得られた。現在予後を決定する因子の探索を含めて解析をすすめている。
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