本年度は、我々が開発した抗原特異的Th2細胞を移入することによって誘発する気道炎症モデルをもちいて、TLR-9リガンドであるCpGオリゴDNAを用いた治療法の開発およびそのメカニズムに関して以下の検討を行った。 (1)Th2依存的気道炎症のCpGオリゴDNAによる制御機構の解明:BALB/cマウスにOVA特異的Th2細胞を移入し、OVAを3日間吸入することによって気道過敏性(Penh)の上昇や好酸球の浸潤を伴った気道炎症が誘発された。この気道炎症のメカニズムを追求した結果、Stat6依存的にTh2依存的なサイトカイン、ケモカインの増強が肺組織で誘発され、惹起されていることが明確にされた。しかし、Th2細胞移入BALB/cマウスにCpGをOVA吸入前に皮下投与することによって、Penhの上昇、好酸球の浸潤がいずれも抑制された。CpGの投与によって、Th2細胞の肺胞への移住が阻害され、肺胞洗浄液中のTh2サイトカインやTarc産生が抑制された。従って、CpGはTh2細胞に直接的あるいは何らかのサイトカインを介して間接的に作用してTh2細胞の移住を抑制することによって気道炎症を抑制すると考えられる。現在さらに詳細な機構を追求中である。 (2)DNAアレイを用いたCpGによるTh2依存的気道アレルギー抑制機構の解明:Th2細胞移入後OVA吸入を行い、気道アレルギーが惹起されたときの肺組織(Th2群)、及びCpGを投与し喘息症状の軽減が認められたときの肺組織(CpG群)を用い、2群間の遺伝子発現レベルの差異を序列化した結果、CpG群ではタイプ1免疫を誘導する分子や、抑制性シグナルに関係するレセプターの遺伝子発現がTh2群と比較して高かった。このDNAアレイで挙げられた、CpG投与時に肺組織で作動する候補遺伝子の機能的意義については現在解析中である。
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