研究概要 |
近年,IL-17の主要な産生細胞であるIL-17産生CD4陽性T細胞(Th17細胞)が自己免疫疾患における慢性炎症の誘導に深く関与すること,IL-23がTh17細胞の生存維持に重要な役割を果たすことが示された。一方,難治性喘息患者では,その重症度と気道でのIL-17産生との間に正の相関が認められることが報告されている。しかし,抗原誘発性気道炎症におけるIL-23/Th17細胞経路の役割の詳細は依然不明であり,本申請研究ではその解明を目的に研究を行った。その結果,1)感作マウスに抗原を吸入投与すると気道局所でIL-23の発現が誘導されること,2)感作マウスに対する抗IL-23抗体の抗原吸入前投与は,抗原誘発性好中球性気道炎症のみでなく,好酸球性気道炎症も抑制すること,3)肺特異的にIL-23を過剰発現させたトランスジェニックマウス(CC10IL-23マウス)では,IL-17産生と好中球性気道炎症の増強のみでなく,Th2サイトカインの産生と好酸球性気道炎症の増強,及び気道過敏性の亢進が認められることを明らかにした。さらに抗原誘発性気道炎症におけるTh17細胞の役割を明らかにするため,抗原特異的なTh17細胞を作製し,細胞移入実験によりその作用を検討した結果,Th17細胞単独移入では好酸球性気道炎症を誘導しないが,Th2細胞と共に移入するとTh2細胞による好酸球性気道炎症を増悪させることが判明した。これらの研究結果より,IL-23/Th17細胞経路は,自己免疫疾患のみでなく,アレルギー性気道炎症の病態にも深く関与することが明らかとなり,IL-23/Th17細胞経路が喘息の新たな治療標的と成りうることが示唆された。
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