研究概要 |
[目的]近代社会の発展に伴い意図的、非意図的に環境申に放出された化学物質(環境化学物質)が酸化ストレス作用を介してTh2型免疫を増強し,アレルギ-性疾患の増悪に関与していることをマウスモデルを用いて示してきた。本年度は,平成18年度に明らかにした環境化学物質TBTの経口投与による気道炎症増悪作用が,CD4+CD25+制御性T細胞の機能抑制によるTh2型免疫の制御不全を介しているかを検討し,環境化学物質のCD4+CD25+制御性T細胞機能抑制が,アレルギ-疾患の増悪に関与している可能について検討した。 [平成20年度研究成果](1)C57BL/6マウスに,総量6umol/kgのTBTもしくは6mmol/kgのDEMを経ロ的に投与し,最終投与後24時間目に脾臓(Spleen),腸管膜リンパ節細胞(MLN),末梢血細胞(PBMC),ならびに肺(Lung)から細胞を調製した。Cychrome標識抗CD4抗体,FlTC標識抗CD25抗体で細胞表面を染色,固定した後に,PE標識抗Foxp3抗体を用いて細胞内染色を行い,FACSにて解析した結果,CD4+CD25+制御性T細胞の選択的な減少は認められなかった。 (2)C57BL/6(CD45.1 congenic)マウスにOVA特異的TCRトランスジェニツクマウスOT-II(C57BL/6 background,CD45.2)由来のCD4+CD25+制御性T細胞もしくはCD4+CD25-T細胞を移入し,OVA/Alumで免疫すると共に前述のTBTもしくはDEMを経ロ投与した。脾臓と腸間膜リンパ節細胞を回収しCychrome標識抗CD45.2とPE標識Annexin V染色を施した。CD45.2を指標として移入CD4+CD25+制御性T細胞もしくはCD4+CD25-T細胞を同定し,Annex V陽性細胞をアポトーシス誘導細胞として解析レた。TCRを介する刺激により,CD4+CD25+制御性T細胞はCD4+CD25-T細胞に比して,アポトーシスが誘導されやすいこと,また酸化ストレス作用を有する化学物質曝露により,この様なTCR刺激依存性のアポトーシス誘導が促進されていた。 これらの結果から,環境化学物質はTh2型免疫応答を負に制御しうるGD4+CD25+制御性T細胞のactivation-induced cell deathを誘導し,アレルゲン特異的CD4+CD25+制御性T細胞機能抑制を介して気道炎症を増悪している可能性が示唆された。
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