1.平成18年度研究では、健常人の骨髄中に存在するヒト好酸球前駆細胞(Lin^-CD34^+CD38^+IL-5Ra^+IL-3Ra^+CD45RA^-)の純化同定に成功した。このヒト好酸球前駆細胞が好酸球増加症の病態に深く関与することを明らかにするために、Hypereosinophilic syndrome(HES)の5例を含む15例の好酸球増加症例について、症例数を増やして解析を行った。15症例の末梢血好酸球の平均値は13800/μLで、健常人の176/μLに比べて約80倍に増加していた。骨髄CD34陽性造血前駆細胞分画中の好酸球前駆細胞の割合は、7例の正常骨髄で平均2.38%であってのに比べて、好酸球増加症15例の平均値は7.44%と3倍以上の有意な増加を認めた(p<0.01)。つまり、好酸球増加症においては前駆細胞レベルに原因がある可能性が考えられた。実際、HESの5例から分離した好酸球前駆細胞の遺伝子発現を健常人から分離してた好酸球前駆細胞のそれと対較したところ、抗アポートシス分子Bcl-X_Lの発現が有意に増加していることを定量的RT-PRC法で確認した。現在、両者間の遺伝子の発見の差異について網羅的に検討するために、マイクロアイレを用いた解析の準備を進めている。今後、HES症例に対する治療標的分子を同定できればと期待している。 2.ヒト好塩基球・肥満細胞前駆細胞の候補として、CD34陽性造血前駆細胞分画中のβ7インテグリン陽性CD123陽性CD203c陽性細胞を純化した。現在、その分化能についてin vitroでの検討を行うとともに、遺伝子発現解析を進めている。 3.肥満細胞分化における転写調節に関して、GATA転写因子の重要性については私たちのグループを含めて多くの報告がある。今回、GATA転写因子のco-factorであるFriend of GATA-1(FOG-1)転写因子の役割について新たな知見を得た。赤芽球・巨核球分化には、GATA転写因子とFOG-1の協調作用が必須であるが、肥満細胞分化に関してはFOG-1が抑制的に働くことを明らかにした。
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