研究概要 |
気管支喘息患者16名および健常者11名の気管支粘膜生検標本を抗TSLP抗体と抗トリプターゼ抗体で二重染色したところTSLP陽性マスト細胞数は有意に喘息患者で増えており、TSLP陽性細胞の90%がマスト細胞であった。喘息患者においてマスト細胞中のTSLP陽性細胞数と血清中のIgE濃度は統計学的有意な正の相関があった(p<0.05)ことよりマスト細胞がIgE依存性の刺激でTSLPを産生していると仮説をたてた。ヒト成人末梢血由来培養マスト細胞をIgE(1μg/ml)で24時間感作した後、抗IgE抗体(3μg/ml)で刺激すると,刺激後2,6時間には刺激前に比較して4〜5倍にTSLPmRNAの発現が増強し、12時間後にはその発現レベルは減少した。マスト細胞をIL-4で前処理するとFcεRIの架橋後TSLPmRNAの発現は53±15.9倍に増強した。細胞上清中のTSLPの量をELISAで測定したところ、FcεRIの架橋による活性化後では感度以下となった。これはマスト細胞由来proteaseがTSLPを分解しているためであった。したがって、マスト細胞から産生されるTSLPはマスト細胞周囲の微小環境で作用していることが示唆され、気管支粘膜生検標本を用い、マスト細胞に近接している細胞を検索したところ、NKT細胞が含まれていた。NKT細胞はTSLP受容体を発現しており、TSLPによってIL-4を有意に産生することから、マスト細胞とNKT細胞の細胞間相互作用により喘息の気道炎症の増悪が示唆された。
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