アトピー性皮膚炎モデルマウスをランダムミュタジェネシスの中から同定した。このマウスを遺伝子操作したC57BL/6J系の遺伝子背景でライン化して観察したところ、遺伝形式からIgE高値を示す個体と皮膚炎を示す遺伝子変異がそれぞれ別の単一遺伝子で決められていて、常染色体劣性遺伝形式を示す可能性が示された。しがもこれが重なった場合に皮膚炎症状が増悪するために、とれらを両方単離する目的でC3H/HeJ系統と遺伝子マッピングを行った。皮膚炎の原因遺伝子は細胞内信号伝達分子の点突然変異であることがわかった(特許申請準備中)が、IgE高値の原因遺伝子は領域を絞れなかった。C3B6F1のインタークロスと言う遺伝子背景がこの表現型をマスクしてしまうものと考えられた。 皮膚炎のマウスにおいては骨髄移植などから血液細胞ではなくて皮膚側に疾患発症の原因があることがわかった。また、このときに皮膚炎の原因遺伝子変異を持つ血液細胞は皮膚炎症状の発症時期を早め、症状を増悪させることもわかった。このことから血液側にアトピー性皮膚炎の修飾因子が存在することがわかった。 また、生後8週で発症するが、その時点では免疫学的にはTh2へのシフトを示唆する所見は認められなかった。 そこで皮膚での遺伝子発現についてRNAマイクロアレイにより検討した。すると疾患発症前の生後早い時期からミュータント皮膚において、皮膚のバリアの恒常性を維持する酵素分子の幾つかと、ヒトアレルギー性疾患で過剰発現が指摘されている酵素分子が過剰発現していることがわかった(特許申請準備中につき記述しない。)。 これらの皮膚の酵素分子がアトピー性皮膚炎発症の修飾因子となる可能性が高いと考えられた。
|