研究の目的:食物アレルゲンであるオボアルブミン(OVA)経口連続投与で感作誘導できるB10Aマウスを用いて、カロテン経口摂取の食物アレルギー発症抑制への影響について検討した。 実験方法:B10AマウスにOVA(1mg)を9週間連日経口投与し、9週後に血清中OVA特異的抗体価(IgE、IgGl、IgG2a、IgA)を測定した。その後、腹腔内惹起により能動的全身性アナフィラキシーショック(ASA)を誘導して体温変化を測定した。また、血清中ヒスタミン濃度の測定、小腸上皮細胞間リンパ球(IEL)の表面抗原組成の解析を行った。α-カロテン、β-カロテンは標準粉末飼料に混合(2mg/100g)して経口投与を開始する2週間前より自由摂取させた。 結果及び考察:血清中OVA特異的IgE、IgGl抗体側において、β-カロテン摂取群では標準粉末のみを摂取させた対照群と比較して有意に抑制された。α-カロテン摂取群、β-カロテン摂取群ともにASA誘導後の大きな体温低下は認められなかった。また、血清中ヒスタミン濃度において、(α-カロチン摂取群、β-カロテン摂取群ともに対照群と比較して抑制が認められ、β-カロテン摂取群は対照群に比べ有意に低い値であった。来年度はβ-カロテン摂取は抗原経口感作を抑制し、食物アレルギ一発症抑制する作用が示唆された。来年度、Treg細胞への影響、培養肺臓細胞を用いたTh1/Th2バランスへの影響、関連サイトカインや転写因子のmRNAの定量的解析を行い、β-カロテン摂取の経口感作抑制のメカニズムについて解析を検討する予定である。母親がβ-カロテン摂取を強化し、乳児の母乳中からのβ-カロテン摂取強化は、乳児における食物アレルゲンの経口感作を抑制し、食物アレルギー発症を抑制する可能性が示唆された。
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