研究概要 |
平成18年度については本研究の準備年度として,以下の(1),(2),(3)の活動を同時並行的に進め,それぞれ微調整を行いながら研究の焦点を絞り込み,3年間の研究の基礎固めを行った。 (1)文献資料収集とデータベース化 調査地に関連する地方性文献資料の収集のほか,政治学,社会学,農村開発,社会関係資本にかんする理論的文献の収集と,データベース化を行った。 (2)現地での予備調査 湖北省沙洋県,江西省余干県において本課題の比較研究の対象となる村落コミュニティを選出し,湖北については9月に1度,江西については4〜5月と10月の2度にわたり予備調査を行った。予備調査では,自然村の構成や宗族の分布や活動などの社会的な要素,また土地・山林経営,農業経営,郷鎮企業,農家副業,出稼ぎなど経済的な要素について基本状況の把握を行った。このほか,写真撮影,地図作成,宗族の族譜資料の収集などの作業を行った。「開発」と「社会関係資本」の関係についての本格的な事例収集は2年度以降の課題であるが,湖北については既に水利組織や老人協会組織をめぐる事例収集を一歩先んじて進めることができた。両地の予備調査の印象によっては,(1)当初から村民関係が希薄で「原子化」していることが予想された湖北のみならず,一般に宗族の活動が活発であるとされている江西でも村民関係の「原子化」程度は高く,すなわち既存の社会関係資本が乏しいこと,また(2)道路建設,水利建設などの開発に関わる公共的活動についても,両地はともに概ね低調であることが分かった。 (3)問題意識の統合 (1),(2)の作業過程で各人が得た知見については,年に3回の研究会を開催して意見交換を行い,討論を通じて仮説を組み上げる作業を行った。
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