1.海外実地調査による資料収集 夏休みおよび春休み期間を利用して、沿海州・アムール地域での実地調査を行った。対象となった言語はウデへ語、ナーナイ語、ウルチャ語であり、これまでの採集資料の分析確認とあらたな資料の採集を行った。具体的には、7月31目より8月14日まで、クラースヌイ・ヤール村にてウデへ語、ナイヒン村にてナーナイ語を調査した。9月11日より21日まで、ブラバ村にてウルチャ語、コンドン村にてナーナイ語コンドン方言の調査を行った。 2.研究会発表とコーパス作成準備 10月1日、札幌の北大文学研究科公開シンポジウム「北方的-北方研究の構築と展開」の分科会にて、「ツングース諸語における複数表示」という題で発表した。10月21日、AA研の「言語の構造的多様性と言語理論-「語」の内部構造と統語機能を中心に」第2回研究会にて、「ナーナイ語とウデへ語の付属語についての予備的研究」という題で発表した。11月18日、札幌学院大学で行われた日本言語学会の第133回大会のシンポジウムにて、ツングース諸語の概説に関しての講演を行った。 ナーナイ語とウルチャ語、さらにウイルタ語に関して、謝金によるアルバイトの作業から、ロシアの研究の語彙集および辞書の項目を入力し、比較対照のための語彙コーパス作成の足がかりとした。さらに清代の満州語辞書である「清文彙書」の満州語項目ならびに漢語訳の入力も開始した。 3.研究成果の刊行と現地還元 これまでの調査研究の蓄積があったので、本研究としては初年度ながら3冊のテキスト集を刊行することができた。郵送により発送し、語り手とと現地教育機関等に配布した。国内の研究所機関ならびに記述言語学に携わる諸研究者にも発送した。
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