研究概要 |
ヘレロ語(及び変種のンバンデル語)とバツァ語を対象に調査・研究を行なった。現地調査は研究代表者の米田がナミビアにおいてヘレロ語/ンバンデル語の調査(2/20〜3/5),研究協力者である神谷俊郎が南アフリカにおいてバツァ語の調査(8/16〜9/18)を行なった。ヘレロ語の調査では声調体系の解明を目的にデータを収集。帰国後は名詞の声調グループの分類と音韻規則について分析を進めている。先行研究ではヘレロ語名詞の声調は文法役割によって現れる声調形が異なるとされていたが,今回の調査で声調形を決定しているのは文法関係ではなく文中での位置であることが明らかになった。分析の途中ではあるがこの成果を2008年4月に関西音声音韻研究会にて発表した。バッツァ語の調査では,まず語彙集作成に向けて語彙の最終確認を行なった。更にこれまで調査を行なっていなかったマウンテン村においても調査を行ない方言差を調べた。この成果は3月にアフリカ言語研究会にて発表した。現在はバッツァ語語彙集を編纂中である。今年度のバツァ語の調査ではバッツァ語がズールー語とコサ語という二大語圏の狭間にあり確実に消失の方向に向かっていること念頭に置き,資料として残すことのできる音声データをできるだけたくさん集めることも試みた。 成果発表は上記の研究会の他に,米田はナミビアのアフリカ諸語の言語事情を「言語権」という視点から捉えた論文とアフリカ諸語の教育事情を話者の意識から捉えた論文を,研究協力者である阿部優子はヘレロ語の正書法の歴史的変遷及び現在の問題に点についての論文を,それぞれ発表した。また10月には米田と阿部が第1回国際バントゥ諸語学会(ヨーテボリ大学,スウェーデン)にて,3月には米田がバントゥ諸語統語論学会(ライデン大学,オランダ)にて発表した。これらは成果発表の機会であったと同時に,ヨーロッパのバントゥ諸語研究者およびアフリカ言語研究機関とのネットワーク形成の絶好の機会となった。
|