研究概要 |
本プロジェクトでは,ヘレロ語およびその変種のンバンデル語(以下まとめてヘレロ語)とバッツァ語を対象に,教材開発と少数言語保護を長期的な最終目的とした記述研究を行なった。ヘレロ語については,主に米田が音韻,阿部(研究協力者)が文法を担当。18年度には米田が歴史資料をもとにヘレロ語話者の移動経路をたどりながらナミビア東部とボツワナ西部に点在するヘレロ語コミュニティでの分布を調べ,声調体系の地域差を見るために各集落で語彙収集を行なった。阿部は文法調査の他にヘレロ語正書法の資料を収集,現行の正書法の浸透状況や問題点を調べた。さらにナミビア大学,教育省,教育開発研究所,教科書出版社でアフリカ諸語の言語教育の現状や問題点,政府の対策等に関する資料収集,ヒアリング,議論を行なった。19年度は米田が声調体系の解明のためのデータを収集し,名詞の声調グループの分類と音韻規則について分析を進めている。先行研究ではヘレロ語名詞の声調形は文法役割によって異なるとされていたが,声調形を決定しているのは文法関係ではなく文中での位置であることが明らかになってきた。 バッツァ語については神谷(研究協力者)がこのプロジェクトの前から継続的に調査を続けているので,それまでの調査結果を踏まえ,18年度は用例の補完的収集,動詞派生辞の現れ方の近隣言語との比較調査,語彙や発音にみられる年齢差や地域差の調査,19年度は語彙集作成に向けて語彙の最終確認,これまで調査を行なっていなかった地域での方言調査を行なった。バッツァ語の調査ではこの言語がズールー語とコサ語という二大語圏の狭間にあり確実に消失の方向に向かっていること念頭に,資料価値の高い音声データを多種,多数集めることを試みた。
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