本研究は、北米、ヨーロッパ、アジアおよび日本の学協会の倫理綱領に関連する組織体制や法制度の調査により、技術者倫理における学協会の役割を明らかにすることを目的としている。 今年度は日米の技術者倫理教科書の包括的なサーベイにより、技術者倫理教育における重要項目の比較研究を行い、日本工学教育協会においてその成果を発表した。また、技術者倫理に関する普遍的な要素と各技術領域における特殊要素の分析を行い、『情報知識学会誌』にその成果を発表した。 学協会の制度に関する調査に関しては、日本の土木学会や電気学会など日本国内の倫理関連委員会の活動状況の調査を行ったほか、米国における学協会の制度に関する調査のため、ASCE(米国土木学会)、NSPE(米国技術士協会)本部を訪問し、倫理担当責任者に倫理綱領の運用状況に関するインタビューを行った。本インタビューにより、ASCEとNSPEにおける倫理綱領違反に対する懲戒処分の実態や、ホットラインの運用方法、技術士登録委員会とASCE、NSPEとの関係などについて明らかにすることができた。さらに、イリノイ工科大学専門職倫理研究センターやAPPE(実践専門職倫理協会)、米国連邦議会図書館、ニューヨーク市立図書館などにおいて倫理綱領に関する資料調査と資料収集を行った。この調査により、米国の初期の工学倫理の文献の状況や現在の技術者資格制度の状況に関する資料を入手することができた。
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