研究課題
基盤研究(C)
医療技術革新は皮肉にも、かつて人が直面したことのない倫理的諸問題を招いている。本研究では、終末期における医療福祉的ケアの課題を取り上げた。その動機の一つは、2006年に報道された終末期患者からの人工呼吸器取り外し事例(射水市民病院)が司法処遇をみたことで、終末期介入における法的規範の曖昧さが顕わにされたことによる。まず、法規則との関連で倫理的課題を再構築することを試みた。市中機関の現場で法的規制を、他の診療領域とは異なって、大きく行為規範として受け入れてきた精神科領域の法と倫理観を参照し、いわゆる"法的パターナリズム"、つまり法規則による外発的な処理システムの持つ争点を明らかにした。すなわち、法的規範の乏しさと倫理的判断の困難さに直面し、法や規則の整備による解決を望む対処モデルでは、結果として直裁な処遇がもたらす官僚主義的弊害を避けられない。時間的余裕の乏しい中で、誤りのない選択を迫られ続ける医療従事者の視座においても、公権に基づく法へ対時し、動機の純粋性を追求して個人の自律に委ねる倫理の存在意義は曲げられない。以上をふまえ、終末期ケアに対する制度上の望ましい支援のあり方につき、2006年の介護報酬・指定基準等改定で新設された看取り介護加算へ注目し、有効性を検証した。加えて、質の高いケアを可能とするには、施設運営者の視点に立っても課題の少なくない状況を指摘し、終末期ケアの行く末が経営者や現場職員の努力、モラルに依拠してしまう問題点を明確化した。すなわち、現況では利用者・家族や従業員の意向を汲み、彼らの希望を叶えようとする施設こそが、経営上破綻するリスクをより多く抱えることになる。これを改善し、管理者にも従業員・利用者にも歓迎される職場態勢の整備が、そのまま運営に際してのインセンティブとなる制度構築を図ることの必要性へふれた。最後に助言プログラムとして、短期的には看護職員の負担軽減、長期的には質の高いケアを提供する事業者への介護報酬の傾斜配分、ないし介護保険サービスを最低担保と捉えた自費による別途ケア受給の方向性を提起し、また利用者・家族へ向け、終末期に関する早い時期からの自己決定の促進が、混乱を減らすであろうことを付記した。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (18件) (うち査読あり 6件)
神経内科 第68巻
ページ: 314-316
月刊医療情報 3月号 第22巻
ページ: 14-14
人間学研究 第23巻
ページ: 15-32
精神科治療学 第23巻
ページ: 776-780
Neurological Medicine Vol.68, No.3
Medical News of the Month Vol.22, No.3
Ningengaku Kenkyu Vol.23, No.1
Japanese Journal of Psychiatric Treatment Vol.23, No.6
神経内科 第66巻
ページ: 499-500
人間学研究 第22巻
ページ: 17-25
精神医学 第49巻
ページ: 870-872
精神科治療学 第22巻
ページ: 1199-1202
武庫川女子大学紀要(人文, 社会科学編) 第55巻
ページ: 61-77
Neurological Medicine Vol.66, No.5
Ningengaku Kenkyu Vol.22, No.1
Clinical Psychiatry Vol.49, No.8
Japanese Journal of Psychiatric Treatment Vol.22, No.10
The bulletin of Mukogawa Women's University-Humanities and social science Vol.55, No.1