研究概要 |
構造が堅く扱い易い超好熱菌の複合鉄硫黄酵素等をモデルとし、複合金属酵素ナノアッセンブリー機構解析を目的として各種解析を行ない、平成18年度には以下の成果を得た。 1.先に解明した超好熱菌鉄硫黄蛋白質スルレドキシンの結晶構造に基づき、(1)三残基置換により[2Fe-2S]クラスターを単核鉄中心に変換した人為蛋白質を作成し、各種分光学的解析を行い、(2)その高分解能X線構造解析にも成功した。分子アッセンブリー機構の基礎的知見を得るため、これらの構造情報をもとに、他の変異酵素を作成・解析をすすめている。 2.鉄硫黄クラスター挿入機構の動的微細構造解析には、分光学的解析法の発展が不可欠である。このため国内外との共同研究で、HYSCORE,ENDOR,共鳴ラマンスペクトル解析に適した鉄硫黄クラスター合成系フェレドキシンのサンプル作成と結晶化および測定をすすめた。理論解析には還元型立体構造が望ましく、今後詳細な解析とシミュレーション等を行う予定である。 3.超好熱菌複合金属酵素として、古細菌の2-オキソ酸:フェレドキシン酸化還元酵素2種(ORF2つおよび4つ)とコハク酸:キノン酸化還元酵素(ORF4つの膜蛋白質)の発現を試み、(1)前者2種につき、複合体して発現、精製する系をつくることができた。(2)超好熱菌酵素の場合、サブユニットとしても比較的安定に発現できることがわかってきた。これは複合金属酵素の分子進化の観点から、極めて興味深い。(3)分光学的解析から、発現酵素の問題点を絞り込めた。すなわち、大腸菌発現系由来の精製酵素では、活性に不可欠な鉄硫黄クラスターが部分的に分解するという知見を得た。従って、次年度以降にホロ酵素の再構成系作成を目指す。結晶化も平行してすすめたが、現在構造解析に適した条件は見つかっていない。次年度以降にさらに検討する予定である。
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