研究概要 |
本年度は,世代間衡平性の経済分析の基礎付けとして,3つの視点から研究を行った。 1.最適成長経路の定常状態の局所的一意性と頑健性2.異時点間の選好順序を表現する効用関数の存在とその性質に関する研究。3.衡平分割の問題を分析するため,σ代数上の選好順序を表現する非加法的効用関数の存在とその性質に関する研究。 1の研究では,一般均衡理論で展開された正則経済の分析手法を用いて,パラメータの変化によって生じる摂動に対し,最適成長モデルの定常状態が持つ頑健な性質を調べた。2階微分可能な効用関数のクラスの下で,ほとんどすべての割引率と効用関数について,定常状態は局所的に有限個であり,比較静学が可能になることを示した。 2の研究では,Koopmansとは異なる公理系の下で異時点間の選好順序を定式化し,それが時間加法的効用関数で表現されるための条件を考察した。これは将来世代の消費を割り引いて評価しる選好順序,すなわち世代間衡平性を許容しない選好順序の研究である。 3の研究では,衡平分割で仮定される加法的効用関数を前提せずに,選好順序が非加法的効用で表現されるための条件を考察し,σ代数上の集合関数に対して,従来とは異なる新たな凸性の概念を提唱した。
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