研究課題
本年度は、前年度に引き続き,世代間衡平性の経済分析の基礎付けとして、3つの視点から研究を行った。1.異時点間の選好順序を表現する効用関数の存在とその性質に関する研究。2.無限期間最適経済成長モデルの最適経路の特徴付け。3.衡平分割問題を分析するため、σ代数上の選好順序を表現する非加法的効用関数の存在とその性質に関する研究。4.衡平分割問題の解の特徴付けと効率性と衡平性の両立可能性に関する研究。1の研究では、Koopmansとは異なる公理系の下で異時点間の選好順序を定式化し、それが時間加法的効用関数で表現されるための条件を考察した。これは将来世代の消費を割り引いて評価しる選好順序、すなわち世代間衡平性を許容しない選好順序の研究である。2の研究では、微分可能性を仮定しない最適制御理論において、Pontryaginの最大値原理とBellmanの最適性原理との関係を明らかにした上で、無限期間の問題に固有の横断性条件を新たに導出し、最適解の特徴付け(必要十分条件の導出)を行った。3の研究では、選好順序が非加法的効用で表現されるための条件を考察し、σ代数上の集合関数に対して、従来とは異なる新たな凸性の概念を提唱した。これは衡平分割で仮定される限界効用が一定な加法的効用関数で表現される選好順序とは異なり、限界効用が逓減するような効用関数を持つ選好順序の研究である。4の研究では、衡平性に関するいくつかの解概念を提唱し、それらの間に成立する論理関係とパレート最適性との関係を調べ、経済主体が非加法的効用関数を持つときに、効率性と衡平性とが両立するための必要十分条件を導出した。
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